あったかい本が読みたい
あったかくなる本がよみたい。
不平等で理不尽な世の中だからこそ、フィクションの中で癒されたい。そして毎日の数々の悩みから解放されたい。
モヤモヤや恐怖が残る後味の悪いホラーではなく心暖まるヒューマンドラマチックな小説が読みたい。
たまたま本屋の古本コーナーに夏川草介先生の「勿忘草の咲く町で 安曇野診療記」があったので購入した。夏川先生は高校時代「神様のカルテ」に出会ってからずっとファンだ。物語での自然の描写がとてもきれいで信州松本に惚れ込み、長野の大学を受験したくらいだ。
本書は医師でもある夏川先生からみた高齢者医療の現状を書いた短編集。主人公の研修医桂と看護師美琴が患者、患者の親族、病院スタッフと医療に向き合い、寄り添い、ときにぶつかり合いながら成長していく物語。テーマは少し重いが、登場人物のやり取りが軽快なので重苦しい気分にならずスラスラと読むことができた。
この本のテーマは悩むこと。高齢者医療という答えの分からない課題に主人公はとにかく悩む。延命すべきか、看取るべきか、親族にどう説明するべきか。そもそも今行っていることに意味があるのか。
でもそれでいい。間違っていても答えがでなくても、悩むことが大切である。悩む過程によって自分の哲学を確立させていくものだ。そう主人公を通して私たち読者に強く訴えているような気がした。
若い主人公だけではなく、ベテランの医者も悩んでいる。患者家族も悩んでいる。
語弊を生むかもしれないが、悩んでいる姿は魅力的だし応援したい気持ちになる。愛おしささえ生まれてくる。
そして、今悩んでいる自分も捨てたもんじゃないなと思えてきた。私もいっぱい悩んで自分なりの哲学を確立させよう。
